「メイ…って…呼ん…で」

 切れ切れの声で、必死に訴えかけられる。

 彼が、苦しく何度も名前を呼んだせいだ。

 こんな乱暴な自分を、メイに許されたような気がして、切なさでいっぱいになる。

「メイ…!」

 抱きしめて呼ぶ。

 胸に触れ、どうしたらいいかも分からなくなってしまった唇で、何とか自分の指を追いかける。

 女の抱き方を、すべて忘れてしまったようだった。

 違う。

 女の抱き方で、メイを抱いてはいけないのだ。

 彼女は、女じゃない。

 メイなのだから。

 これまでの記憶も何もかも、役に立たない相手を好きになってしまったのだ。

 どれとも比較しようのない気持ち。

 すべて違う条件なのだ。

 いままで―― が、あてはまるハズもない。

 彼の触れ方では、痛いに違いなかった。

 柔らかい胸だというのに、カイトはまったく加減が出来なかったのだ。

 心のどこかが、『これじゃいけねぇ!』と叫ぶのに、もう一人の自分が、『うるせぇ!』と怒鳴り返すのである。

 彼女が、消えてしまったらどうするのか。

 ゆっくり優しくしている間に、腕の中からすり抜けてしまったらどうするのか。

 そんなことは、もう耐えられなかった。

 とにかく、彼女を地上にとどめておきたかったのだ。

「あっ…!」

 メイが身を竦めるように震える。

 カイトの手のひらが、彼女の脚の内側を割ったからだ。

 でも、すぐにいまの声は間違いであったかのように、彼にしがみついてくる。

 頭の芯が、更に熱くなった。

 あんなに乱暴にしていたのに、彼女の身体がちゃんと応えようとしてくれていたのだ。

 ざわっと、鳥肌が立ちそうになる。

 メイという存在の箱を、彼は初めて開けているのだ。

 リボンをむしりとり、包装紙を破り、箱が変形しそうな勢いで開けようとしているのだ。