冬うらら~猫と起爆スイッチ~


 知らないメイがいる。

 働くためのジーンズ姿で、あっちにパタパタ、こっちにパタパタ。

 着飾った姿をしているワケじゃない。

 綺麗な服を着て、ちょこんと座っているワケではないのだ。

 なのに、生き生きとして見えた。

 こういう仕事をするのが、好きでしょうがないという顔である。

 きっと、家事をするのが好きなのだ。

 カイトにしてみれば、それを彼女がしているのは、労働をさせているような気がしてしょうがなかった。

 なのに、その姿はいまにも歌い出しそうである。

 ホウキにはホウキの歌があって、雑巾がけには雑巾がけの歌がある。
 それぞれのリズムで、ステップを踏む。

 料理を作る時も、そうだったのだろう。

 カイトの見ていないところでは、いつもこんな風だったのかもしれない。

 しかし、何故メイが家政婦として、ここに帰ってきたのかが分からなかった。

 あんなことがあったのに――

 ゾクッ。

 カイトのうなじに、冷たいものが走った。

 あの記憶を、呼び戻してしまったのである。

 箱を開けると、悪霊たちが飛び出すのは分かっていたのに、彼女を目の前にしたせいで、思い出してしまった。

 ふらっ。

 その気配から逃げるように、カイトは部屋に戻った。

 ジャンパーを脱ぎ捨てて、ベッドにひっくり返る。