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メイが―― 働いている。
カイトは、思わず何度も瞬きをして、その存在を確認してしまった。
ついさっき、彼の手を離れて調理場に逃げてしまったが、間違いなく彼女はそこで鍋なんかを洗っていた。
一生懸命、という顔で。
仕事。
そう言われた。
鍋を洗うのが仕事なのか、と思いかけたが、そうではないことに気づく。
鍋洗いが済んだら、今度は掃除を始めたのである。
カイトがそこに立って見ていることに気づいてはいるのだろうが、メイと視線がぶつかることはなかった。
調理場が終わったら、次はダイニングだ。
彼の脇をすりぬけて、新たな場所を掃除にかかる。
これでは、まるで家政婦だ。
はっ。
それで理解した。
彼女の言った仕事、というのは家政婦の仕事のことなのだ。
裏で糸を引いているのが、誰かなんて考えるまでもなかった。
ハルコ以外にありえない。
本来、彼女のしていた仕事を、いまメイがしているのである。
何でだ。
しかし、理由が分からなかった。
家政婦として戻ってくるなんて、想像だに出来なかった。
もう二度と、彼女には会えないと思っていたのだから。
なのにそこにいる。
胸がきゅっと鳴いた。
こんな風に―― こまネズミのように働くメイの姿を見たことはなかった。
一緒に生活している時も、きっと彼女はこんな風に働いていたのだろう。
彼がムキになって禁止していたために、カイトのいるところでは、働いているのを極力見せないようにしていたに違いなかった。
メイが―― 働いている。
カイトは、思わず何度も瞬きをして、その存在を確認してしまった。
ついさっき、彼の手を離れて調理場に逃げてしまったが、間違いなく彼女はそこで鍋なんかを洗っていた。
一生懸命、という顔で。
仕事。
そう言われた。
鍋を洗うのが仕事なのか、と思いかけたが、そうではないことに気づく。
鍋洗いが済んだら、今度は掃除を始めたのである。
カイトがそこに立って見ていることに気づいてはいるのだろうが、メイと視線がぶつかることはなかった。
調理場が終わったら、次はダイニングだ。
彼の脇をすりぬけて、新たな場所を掃除にかかる。
これでは、まるで家政婦だ。
はっ。
それで理解した。
彼女の言った仕事、というのは家政婦の仕事のことなのだ。
裏で糸を引いているのが、誰かなんて考えるまでもなかった。
ハルコ以外にありえない。
本来、彼女のしていた仕事を、いまメイがしているのである。
何でだ。
しかし、理由が分からなかった。
家政婦として戻ってくるなんて、想像だに出来なかった。
もう二度と、彼女には会えないと思っていたのだから。
なのにそこにいる。
胸がきゅっと鳴いた。
こんな風に―― こまネズミのように働くメイの姿を見たことはなかった。
一緒に生活している時も、きっと彼女はこんな風に働いていたのだろう。
彼がムキになって禁止していたために、カイトのいるところでは、働いているのを極力見せないようにしていたに違いなかった。


