冬うらら~猫と起爆スイッチ~


 本当は土、日、祝日は休みだった。

 しかし、そこはシュウと交渉した。

 土日でも、仕事に来させて欲しい、と。

 お給料を、もっと欲しいということではない。

 カイトと出会う時間が欲しかったのだ。
 平日では、それが不可能だったので。

 彼は、労働基準法の関係で許可はできないが、来たいのなら自由にしてもらっても構いません、と言った。

 そして、ついに初めての週末がやってくる。

 昨日の土曜日は出会えなかった。

 彼女が来た時には、もうこの家は誰もいない状態だったのだ。

 しかし、交渉の甲斐あって、ついにカイトと出会うことが出来たのである。

 まだ、胸がドキドキしていた。

 落としてしまった鍋を、落ち着かない指で拾いあげる。

 洗って拭いたところまではよかったのだが、片づけようと思った時に手を滑らせてしまったのだ。

 だが、その音が彼を呼び寄せてくれた。

 これから、幸運の鍋を、もう一度洗わなければならない。

 メイは、鍋を流しに入れた。

 ガタン、ガチャ。

 落ち着こうと思っているのに、手が震えてしまって、耳障りな金属音を立ててしまった。

 ちゃんと仕事しなきゃ。

 まだ、勤務時間中なのだ。

 お給料をもらっている時間だからこそ、きちんと仕事をしないといけない。

 カイトと話したい、という気持ちはいっぱいある。

 彼だって驚いていたし、事情を聞きたそうな状況だった。

 でも、いまはダメなのだ。

 ちゃんと、お仕事を終わらせてから。

 指が震える。

 会えた嬉しさも強い。

 でも、それだけじゃなかった。

 怖いのだ。

 怖くて指が震えるのだ。