冬うらら~猫と起爆スイッチ~


 だから、お給料ももらうことが出来るし、その代償として、きちんと働かなくてはならなかった。

 仕事上の雇用者と被雇用者ではあるが、人間的には同じところに立つことが出来るのである。

 人に立場を聞かれても、今度はちゃんと答えられるのだ。

 しかし、ハルコの推薦だけで素通りできなかった。

 面接があったのだ。

 面接官は、シュウだった。

 彼は、おそらく全部知っているだろうに、彼女に履歴書を提出させ、いくつかの質問をし、1月4日から来て下さいと言った。

 採用ということだ。

 ありがとうございます、と言った彼女に―― 『引き算が駄目なら、足し算にするしかないでしょう』と、不本意そうな表情で眼鏡の位置を直した。

 意味は分からなかったが、彼が許可をしてくれたということは、メイがこの家で働くことについて、益があると判断された気がして嬉しかった。

 1月4日。

 最大の緊張日だった。

 お正月休みなので、もしかしたらカイトがいる可能性があったのだ。

 しかし、彼はいなかった。

 別の部分で驚いたことがある。

 ほんのしばらく彼女がいなかっただけで、どこもかしこも埃まみれだったのだ。

 カイトの部屋に至っては、ビールの空き缶や脱ぎ捨てた衣服や、とにかくひどい騒ぎで。

 何一つ変わっていなかったのは、シュウの部屋だけだった。

 勿論、彼の部屋にあるものは何も触らなかったけれども。

 その日一日は、とにかく掃除で一生懸命だった。

 カイトの部屋をピカピカにした。

 それから、会えない日が続いた。

 しょうがない。

 家政婦の仕事は、10時から5時までなのだ。

 仕事に出るカイトとは、ちょうどすれ違う時間だった。