ちゃんと、寝ているし食べている。

 でも、心の中のつかえが、まだ全然取れていないのだ。

 そのつかえを振り切って、彼女は家を出た。

 アパートの階段を降りて歩き出す。

 パン屋は駅前にあった。

 昨日じっくり歩き回ったので、この辺りの地理は分かるようになってきた。

 おかげであの日、実にくだらないところで道を間違えていたことに気づいたのだ。

 あんなことのせいで、全てを台無しにしてしまったかと思うと―― 自分を嫌いになってしまいそうだった。

 恥ずかしいことに、例の派出所の前を通らなければ、パン屋には行くことが出来ない。

 あのお巡りさんがまだいるかどうかなんて、確認も出来なかった。

 きっと向こうは覚えているだろうから。

 小走りに走り抜けた。

 怖い番犬のいる家の前を、駆け抜けるように。

 そうして、パン屋に到着した。