カイトが、本当に心から『うめぇ』と言ってくれた一品である。

 あの時の気持ちを、メイはずっと忘れない。

 絶対。

 その嬉しさを忘れられず味をしめ、また間をおかずにカレーを作ってしまいそうな自分が想像できて、更に赤くなってしまった。

 もっともっとおいしく作れるようにならなくちゃ!

 そうしたら、きっともっと嬉しくなれるような気がしたのだ。

 メイは、朝からすごく上機嫌になってしまって、鼻歌がこぼれている自分に気づかないままダイニングに入ったのだった。

 あら?

 入った瞬間に違和感を感じて、メイは足を止めた。

 ダイニングの景色を、キョロキョロと見回す。

 何が変と言うわけではない。

 具体的には表現できないのだが、彼女はちょっと首をひねった。

 別に気にすることもないかと、調理場の方に向かう。

 また、違和感。

 いや、今度は圧倒的にはっきりと分かる違和感だった。

「あっ!!!!!」

 メイは、思わず大声をあげてしまった。

 ガスの上に乗せたままにしていたカレー鍋が―― そこになかったのである。