冬うらら~猫と起爆スイッチ~


 しかし。

「……」

 ハルコは。

 肩を震わせて笑っていた。

 耐えきれずにソファに座ると、身体をよじるようにしてソファの背にもたれる。

 そ、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!

 あっさり、誘導尋問の数々に引っかかり続けたメイは、恥ずかしさに、でも内心で悲鳴のように言った。

 ちょっとしたお金を借りるだけだったハズなのに、どうして300万という数字が出てきたのか。

 それを、うまく説明できなかったのである。

 出来るはずがなかった。

 カイトは何も説明をしなかったのだから。

 まだ彼女に借金があると思われたのだろうかと、そう誤解したのではないだろうかと、あの後ベッドの中で考えて決着したのだ。

 そういう憶測も交えて、過去を隠しつつも、ハルコにしゃべらされたのである。

 その度に彼女の目が笑い、最後には耐えられないかのようないまの状態になった。

「ごめんなさい…ちょっと、あんまりおかしかったものだから」

 顔を上げたハルコの目には、涙すら浮かんでいる。

「けど…カイト君が…ああ、だめ…」

 また笑い伏す。

 もしかしたら、メイは彼の尊厳を崩壊させることを言ってしまったのだろうかと心配になる。

 ソウマやハルコとの悶着のタネになるのではないかと思って、オロオロしてしまう。

「あの! でも、1万円しかお借りしてませんから! 本当です!」

 それを懸命にハルコに訴えた。

 しかし、それもおかしいことだったらしい。

 またひとしきり笑った後、苦しそうに息をつく。

「ああもう…せっかく、もらえるというのならもらっておけばいいのに」

 最後は困った眉になりながら、ハルコは締めくくった。

 そんなこと。

 すっかり弱ってしまった。

 いまの自分の立場を考えたら、悪すぎて出来るハズもないというのに。

 ハルコは無茶なことを言うのだ。

 しかし、カイトも無茶なことをする男だ。

 もしかしたら、彼らにとってこういう事態は、さして珍しくないものなのだろうか、と心配になってしまう。