おい。

 帰り着いたカイトは、イヤな予感が的中したことを知った。

 いや、本当はイヤな予感などはなかっ――もとい、見事な的中である。

 カイトは車を入れると、早足で玄関に向かった。

 違う車が止まっていたのだ。

 ハルコのものではない。
 もう彼女は帰ったのだろう。

 その車はなくて、代わりに。

 カイトはちらとのぞき込んだ。
 ナンバーは覚えていないが、この車種と内装を見れば一発である。

 あんにゃろう!

 勝手な訪問者が誰であるかに気づいて、一気に沸騰した。

 バン、と玄関を開けて、物凄い勢いで自分の家に殴り込んだ。
 上着を握りつぶさんばかりにひっつかんだまま。

 途端、笑い声が聞こえた。
 特徴のあるその笑い方に、更に確信を強めて、カイトは声の方へと走った。

 ダイニングの方だ。

「くっくっく…そうそう…そこで、カイトが…」

 近づく度に、そいつの声がくっきりと聞こえてくる。

 しかも、腹の立つことに話のネタは、どうやらカイトのようだった。

「そんな…あははっ」

 え?

 けれども、受け答えをしながら笑っている声を、彼は聞いてしまった。

 あの声を聞き間違うハズなどない。

 メイだ。

 彼女が、このダイニングで笑っているのだ。

 頭に、カッと血が昇った。