冬うらら~猫と起爆スイッチ~


 何をやってんだろう。

 そんな自分に気づいて、ちょっと笑ってしまった。

 慌てて口を押さえる。

 カイトに気づかれたのではないかと思ったのだ。

 けれども、ソファの気配はさっきと変わらない。でも、まだ寝息じゃなかった。

 さっきみたいに、ふーっと吐き出すような息は分かったのだけれども。
 繰り返されている普通の呼吸を感じられない。

 まだ、起きている証拠である。

 そうして、アンテナを立てて、10分が過ぎた。
 いや、暗いから分からないだけで、実は30分くらい過ぎてしまったのかもしれない。

 とにかく、それでもなお規則正しい寝息が聞こえてこないのだ。

 もしかしてもう寝ているのだろうか。

 あんまりソファが静かなので、メイは不安になる。

 カイトの寝息は静かなのかもしれない――そう思いかけた。

 もう少し待つ。
 でも静かだ。
 もっと待った。

 でも、限りなく部屋が静かであることしか分からない。

 眠った、の?

 やっぱり自分の想像違いで、この静かさが彼が眠っている証なのかもしれない。
 そうメイは思った。

 しかし。

「…何で寝ねーんだよ」

 ぼそっと。

 かき回したスープ鍋から、入れたハズのない具が見えた気分だ。
 ブロッコリーは入れていないハズなのに。

 彼が起きているだけでなく、自分が起きていることまでバレバレだったのである。

 ギクッとしてしまうが、動けるハズもない。

 いまバタバタと動けば、ベッドがきしむ。

 そうすれば、カイトの言葉通りです、と彼に宣言するようなものだ。

 口を閉ざしたまま、メイは息を殺した。

「何だ…寝ちまってんのか」

 またぼそっと。

 独り言のように、カイトは呟いた。

 それにほっとするが、安心のため息なんかつけるはずもない。

 いい誤解をしてくれているのだから、このままカイトにはそう思われていたかった。