六本木のド真ん中で起きた
この何だかヨクワカラナイ急展開―…
に、あたしは
プチパニくってて…
でも、熊谷さんは
何にも気にしてないかのように
ごく普通に、あたしに話しかけてきていた。
「なんでオレが、ディレクターの顔なんか覚えてたのか、知りたい??」
(知りたくない!!)
なんて、
もちろん言える状況なんかじゃなくて
「ど、どうしてですか?」
相変わらず口角を上げて、意地悪く笑いながらあたしを見てくる熊谷さんに
恐る恐る聞いてみる。
まぁ、そこは
本当に気になってたとこだし……
さっき
反撃な感じに熊谷さんにした質問。
“よくディレクターの顔なんて覚えてましたね”
それは言わば
芸能界の掟のようなもの。
普通タレントさんは、一度インタビュー撮ったくらいのディレクターの顔を覚えてるなんて事
まず無いわけで。
でもそれは、コッチ側もアッチ側だって暗黙の了解…のハズ…
だからこその質問。
だからこその不思議。
熊谷さんは
疑いの眼差しで見つめるあたしに
「あんた、ちょっと印象的だったんだよねぇ」
って、静かに話し始めた―。
*


