その顔が泣いているようで、思わず引き止めてしまった。


「なぁっ…」

「なーに?」

「俺、」

「うん、何?」


でも、気の利いた言葉なんか喉から出てこなくて、振り返ったお前の顔が、やっぱり泣いているようで…


「…や、何でもない。」


やっぱり、俺の喉から気の利いた言葉が出てくる事はなかった。


「そ。じゃ‥‥ばいばい。」

「っ…。」


小さく笑ったお前は、別れの言葉の前に子供みたいなキスをした。

お前からのキスは、あれが最初で最後だった。