英雄飼育日記。




許可をとり、中身を取り出す。

紙袋から出てきたのは、プラスチックの小袋。

半透明な袋の模様の隙間からは、おいしそうなクッキーが隠れ見えしている。


お詫びの品がクッキー。

私の命の危機はクッキーでちゃらになるんかい。許すけど。



「これ、どこの店の?」

「俺」


変わった店名だねー、と一度受け流す。

反応がない。

まさか、反応がないということは。



「………………も、もしかして手作りだったり?」

「別にいいだろ、誰が作ったって」

「うわあ、漫画みたいな男だ」


自分で「俺様」言っちゃうし、クラスでは孤高の存在。

ファンタジー世界の住人かと思えば、何故か味方になる。

とても甘党で、趣味はお菓子作り。

顔は、世間一般の意見で言うと「かっこいい」。


どこの漫画から飛び出してきたんだお前は。

でも素直に全て言ってしまうとクッキーが没収されてしまいそうなので、こぼれそうになる言葉を必死で呑み込んだ。

クッキーに罪はない。

そして私にも罪はないはずだから、貰っておくことにしよう。

元はと言うと、市木(実質的には風見だけども)が襲ってきたのが悪いんだし。


「ありがとー。じゃー」


ね、と言い切る前に言葉は遮られた。

彼が私の鞄を掴むことによって。

最近私全然ものを言えてないよね。言論の自由が危ぶまれているよ。


「今日の放課後、あの路地裏に来い」

「なんて鮮烈かつ曖昧なお呼び出し」

「来ねーと、明日また襲う」


その目が割と本気だったので、私は黙ってこくこくと首を振った。

その様子はまるでおもちゃのようで。



わかったならいい、とだけ言い残し、2人は1年玄関へと消えていった。

玄関に入る途中、結構空気だった風見が殴られているのも見えた。

あわれなり。



「………………あんた、襲われる関係だったの?」

「へ」


衣幸様がご登校なされました。