怒りも恥ずかしさも込み上げてこない。
唯一たつのは鳥肌。
そして開く、現実逃避への扉。
「………………わっつ?」
「印をつけた。これで、サクハ君がどこでピンチになっても助けに行ける」
満足そうな笑みを見せる彼は、私の腕を解放してテレビに顔を向けた。
あー、ファンタジー生物には色んなものが欠如してるのね。
いきなり襲ってくる風見のように。うん。
残り20分。
容器とスプーンを持ち、台所へと足を運ぶ。
あれ犬だから、軽いじゃれ合いのつもりなんだろーなー。
そうだよねー、キットソウダヨネー。
何だかんだ言って、実際私は混乱していた。
今日は久しぶりに弁当でも作ろう。うん、そうしよう。
別にリビングに戻りたくないわけじゃあない。
少しはバランスのとれた昼食をとらないと。
そういうことです、あーゆーれでぃ?
何故か自分自身に対して喧嘩を売りながら、弁当の容器を棚から取り出した。
いつも購買のパンだからといって、料理ができない訳ではないのだ。
さすがにできない料理はあるけど。エスカルゴとか、フグのお刺身とか。


![[百合]円還恋心](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)
