英雄飼育日記。




私は初めて犬に怒られました。

私は犬以下か!

でもかわいいから許す!

中身カナトだけど。


「で、妖怪は人に変化できない」

「で、どういう違いが?」

「妖は人に変化できるから、人の世に馴染むことができる。それはすなわち」


人に友好的な態度を見せる奴が多い。

多い、ということはそうでない奴もいるということの裏返しだろう。

そこをはっきり言わないあたり、カナトがどういう奴か伺える。


「一方妖怪は、人のことがわからない。だから悪意がなくても人に危害を加えてしまう」


だから討伐の対象になるのだよ、とカナトはまとめた。

犬にオカルト的説明されても素直に受け止められないものだなあ。

見た目犬だし。柴犬サイズだし。かわいいし。



「でも悪気ないのに倒されるって、なんか可哀想だね」

「別に殺す訳ではないよ? ただ、妖怪がいた世界に戻してやるだけだ」


殺すことも可能ではあるが。

そんなカナトの不穏な補足はとにかくなかったことにする。

世界に戻すってどういうこと?

そう尋ねると、カナトは相変わらず犬の姿のまま説明を再開した。