カナトの説明は案外わかりやすく、すんなりと脳に入ってくる。
「私やあの風狼のように、完全な人型に変化できるのを妖と呼ぶ」
「変化?」
「本当の姿はこれではなく、それぞれ獣の姿だ。私でいえば……これだね」
ば、あたりでカナトが姿を消す。
思わず360°部屋を見回すが、カナトの姿はどこにもない。
そう、カナトの姿はどこにもない。
私の知るカナトの姿は。
「ここだよ、ここ」
足下にいる、犬が喋った。
その声はどう考えてもカナトのもの。
どっからそんな好青年ボイス出してんだという突っ込みは秘めておく。
私はもう考えるのをやめたのだから。突っ込みもやめてやる。
「私は「影狗」。本来の姿はこうだ」
「か」
「か?」
「かわいいなこら! 何お前めっちゃかわいいんだけど!」
足下にいる犬は、とてつもなく私のドツボにハマっていた。
胴体にはさらさらな黒い毛並み(短毛)、頭部には鮮やかな赤。
目は森を映したかのような深い緑。
そして片方だけ垂れた耳。
さらに中型犬サイズ。
「カナト! 散歩いこっか!」
「いやいやいや、それは違う」


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