そう思った。 唇に暖かい感触がして、目の前には沢渡の顔が広がっていた。 「……っ!?」 沢渡はドアの方をチラリ、と見る。 「じゃあねぇー」 沢渡のキスを拭うように俺は袖口で唇を拭った。 こすりすぎて唇が切れて血が出た。 それも気にしないくらい俺は沢渡のキスを拭いたかった。 どうせなら天音とやりたかったな。 そう思った俺は末期なのだと、自分を嘲笑った。