ラミエルが答える。
「あ、はい。以前に3回、あの方たちからわたしのスパコンにメールが届きましたよね?その記録を解析して、こちらからメールを送れる方法が分かったんです」
 なるほど、それであのマクスウェルの魔女たちをおびき出してみようというわけか。確かに相手の狙いがはっきりしない以上、それが一番手っ取り早いとは言える。俺たちは二尉の作戦で行くことにした。
 問題は場所だった。彼女たち、特に1号サチエルの超能力はすさまじいパワーだ。かなり広い、かつ周りに重要な建物とかがない開けた場所である必要がある。東京にそんな場所はないだろうから、どこか地方へ行くのか?と思っていたら、桂木二尉があっさり言った。
「それならうってつけの場所があるわよ。東京のど真ん中にね。夢の島公園の、多目的コロセアムなら問題ないわ」
 というわけで、決着をつけたいので7月下旬のある日の午後6時30分に、その場所へ来いという内容のメールをラミエルが自分のスパコンから送信した。
 正々堂々と勝負というわけなので、自衛隊の大部隊を連れていくわけにはいかない。決戦場へ出向くのは桂木二尉、俺、ラミエル、そして麻耶のいつもの顔ぶれだけという事にした。と言っても、桂木二尉以外は自衛隊員ではない一般人なので、あ、まあラミエルは一般人というより宇宙人だが、武器を携行する許可は当然下りなかった。
 一応全員陸上自衛隊の野戦服を着こんで、二尉だけが拳銃、自動小銃を持って二尉の車で夢の島公園へと向かった。夢の島というのは東京湾に突き出た、ごみの埋め立てで出来た土地だ。
なんか不潔なイメージがあったのだが、中は広々とした芝生の運動場や様々な種類の木がそこら中に生い茂っている、緑豊かな場所だった。
 多目的コロセアムというのは公園の真ん中にある、直径数百メートルもある巨大なすり鉢状の窪地だった。コロセアムと言っても大理石の観客席に囲まれていたりするわけではなく、芝生と雑草に覆われた地面が広がっているだけなのだが、中央の一番低い場所に立つと、縁の部分のベンチを見上げる格好になった。