妹神(をなりがみ)

 那覇空港に到着した時はもう真っ暗になっていた。美紅の元の家と言うべきか、母ちゃんの実家と言うべきか、その大西風の家がある久高島へは船でしか行けず、もうその日の船は終わっていたので俺たちは那覇市内のビジネスホテルに一泊して翌日の朝、その島へ向かうことになった。
 旅の目的が目的だから生まれて初めての沖縄と言っても俺は観光気分で浮かれてはいられなかった。モノレールで繁華街まで行き、そこからホテルまで歩いた。さすがに南国で珍しい木が生えていたり、街の雰囲気も本土とはなんとなく違っている。
 しかし、旅の目的を見失ってはいけない。俺は自分自身にそう言い聞かせた。その時、母ちゃんが急に「キャッ」と短い声を上げていきなり走りだした。な!どうしたんだ?まさか早くも純のお母さんが?
 俺と美紅もあわてて母ちゃんを追いかける。だが母ちゃんがダッシュした先はアイスクリームの屋台だった。
「きゃあ、懐かしいわね。紅イモ味に、シークワーサー味に……わあ、ほら雄二、あんたこれ知らないでしょ?ウージ味なんて東京で買うと馬鹿高いのよね。美紅はどれにする?」
 あ、あのう……早くも旅の目的を見失いかけている人が約一名いるような気がするんですけど……
 久高島へ渡るフェリーは沖縄本島の反対側の海岸から出ていた。俺たちはバスで安座真という港へ行き、そこから小さなフェリーに乗った。母ちゃんが言うには運よく高速フェリーに間に合ったそうだ。そして久高島の船着き場までたった十五分で着いてしまった。船で何時間もかかる絶海の孤島をイメージしていた俺は拍子抜けしてしまった。