ソナは拳銃を美里たちの方へ向け直し、日本語で叫んだ。
「その女にはもう用はない!勝手に連れて行け!」
 自衛隊員の一人に引っ張られて時空の穴へ向かう美里の背中に、ソナが朝鮮語で叫ぶ。
「在日同胞!せめて、あなたたちは……」
 その続きは美里の耳には届かなかった。その瞬間に美里の体が時空の穴を通り過ぎたからだ。自衛隊員たちと一緒に転がり落ちた場所は、あのサイクロトロンの内部だった。
 パーンという音が響いた。それが、ソナが引き金を引いた音だったのか、それとも壁の非常灯が破裂した音だったのか、その時の美里には分からなかった。そして、今でもそれは分からない。