「まあ、そうだったのですか!」
人民班長の女はますます愛想がよくなった。
「でしたら、11階に空き部屋がいくらでもあります。あら、ではそちらの女性は?」
「ああ、これは私の妹です。田舎で学校の教師をしております。本日は特別に私たちに同行して平壌見学に参りました」
「では、ご案内を」
「あ、いえ、それには及びません。ご婦人を、それも人民班長さんを11階までお連れするわけにはいきません。鍵さえ貸していただければ、自分たちで見て回ります」
人民班長の女は、なぜかそう聞いてほっとしたような表情を顔に浮かべた。
「あら、そうですか?空き部屋には鍵はかかっていません。どの部屋でも好きなだけ見ていらして下さって結構ですわ」
「そうですか。では、お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます。さあ、行こう」
ソンジョンに促されて、美里はエレベーターの前まで歩いた。するとソンジョンにぐいと腕を引っ張られて、すぐ脇の階段の方へ行かされた。ソンジョンは苦笑しながら人民班長の女に言った。
「はは、この子は田舎者で。平壌は初めてでして」
階段を3階まで登ったところで、美里はソンジョンに尋ねた。早くも脚が鉛の様に重くなり、息が上がってしまっていた。
「なんでエレベーター使わないの?」
「あれは飾りだ。平壌は昔から電力が不足している。一般市民用のアパートでエレベーターに電気が通じているわけはない。だからどんな立派な高層アパートでも、5階より上に好きこのんで住む奴はいない」
「だったら、怪しまれたんじゃない?11階って言ったでしょ?」
「軍の士官クラスが住むとなれば話は変わる。軍のエリートが住んでいるアパートなら特別にエレベーターにも電気を通してもらえる。さっきあの人民班長の愛想が急に良くなったのはそのせいだ」
人民班長の女はますます愛想がよくなった。
「でしたら、11階に空き部屋がいくらでもあります。あら、ではそちらの女性は?」
「ああ、これは私の妹です。田舎で学校の教師をしております。本日は特別に私たちに同行して平壌見学に参りました」
「では、ご案内を」
「あ、いえ、それには及びません。ご婦人を、それも人民班長さんを11階までお連れするわけにはいきません。鍵さえ貸していただければ、自分たちで見て回ります」
人民班長の女は、なぜかそう聞いてほっとしたような表情を顔に浮かべた。
「あら、そうですか?空き部屋には鍵はかかっていません。どの部屋でも好きなだけ見ていらして下さって結構ですわ」
「そうですか。では、お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます。さあ、行こう」
ソンジョンに促されて、美里はエレベーターの前まで歩いた。するとソンジョンにぐいと腕を引っ張られて、すぐ脇の階段の方へ行かされた。ソンジョンは苦笑しながら人民班長の女に言った。
「はは、この子は田舎者で。平壌は初めてでして」
階段を3階まで登ったところで、美里はソンジョンに尋ねた。早くも脚が鉛の様に重くなり、息が上がってしまっていた。
「なんでエレベーター使わないの?」
「あれは飾りだ。平壌は昔から電力が不足している。一般市民用のアパートでエレベーターに電気が通じているわけはない。だからどんな立派な高層アパートでも、5階より上に好きこのんで住む奴はいない」
「だったら、怪しまれたんじゃない?11階って言ったでしょ?」
「軍の士官クラスが住むとなれば話は変わる。軍のエリートが住んでいるアパートなら特別にエレベーターにも電気を通してもらえる。さっきあの人民班長の愛想が急に良くなったのはそのせいだ」



