「おお!それはちょうど良かった!」
ソンジョンは大げさに喜んで見せた。事前にソンジョンから説明を受けていた美里とソナも深々とお辞儀をする。北朝鮮では住民を5戸ずつグループ化して相互に監視させている。一般家庭では2軒で同じ台所を共有させ、料理する食事の量が不自然に増えたり減ったりしていないかをチェックさせる場合もあると言う。
よそ者や不審人物が紛れ込んでいたら、それらの監視機構を通じてすぐに察知される。平壌のような大都市ではアパートの住民全員を一つの班に組織し、夫の社会的地位が一番高い専業主婦の女性がそこの人民班長として住民を統率する。今目の前にいる中年女がこのアパートの人民班長というわけだ。この1994年の時代では、こういう市民同士の相互監視機構がちゃんと機能していたはずだから、気をつけろ、とソンジョンに言われていた。
「実は私……」
ソンジョンはさっきの軍の身分証をその女に見せながら言葉を続けた。
「この秋から首都防衛隊に転属になる事になりまして」
そう聞いた女は素早く三人の胸の金日成バッジに目を走らせた。そして急に態度が丁寧になり、道端では何だからと言って、三人をアパートのロビーに招き入れた。
「あら、そんな偉い軍人さんとは気づきませんで、失礼いたしました。それでここにはどういう御用で?」
「はい。ついては平壌市内に居住を許可されました。また栄転を機にこれと……」
そう言ってソンジョンはソナの方に手を置いて、恥ずかしそうな口調になって言った。
「結婚する事になりました。そこで軍の宿舎を出て住む家を探しに来たのですが、軍から三か所紹介された場所の一つがこちらのアパートなのです。上の方の階に空き部屋があると聞いて来たのですが」
ソンジョンは大げさに喜んで見せた。事前にソンジョンから説明を受けていた美里とソナも深々とお辞儀をする。北朝鮮では住民を5戸ずつグループ化して相互に監視させている。一般家庭では2軒で同じ台所を共有させ、料理する食事の量が不自然に増えたり減ったりしていないかをチェックさせる場合もあると言う。
よそ者や不審人物が紛れ込んでいたら、それらの監視機構を通じてすぐに察知される。平壌のような大都市ではアパートの住民全員を一つの班に組織し、夫の社会的地位が一番高い専業主婦の女性がそこの人民班長として住民を統率する。今目の前にいる中年女がこのアパートの人民班長というわけだ。この1994年の時代では、こういう市民同士の相互監視機構がちゃんと機能していたはずだから、気をつけろ、とソンジョンに言われていた。
「実は私……」
ソンジョンはさっきの軍の身分証をその女に見せながら言葉を続けた。
「この秋から首都防衛隊に転属になる事になりまして」
そう聞いた女は素早く三人の胸の金日成バッジに目を走らせた。そして急に態度が丁寧になり、道端では何だからと言って、三人をアパートのロビーに招き入れた。
「あら、そんな偉い軍人さんとは気づきませんで、失礼いたしました。それでここにはどういう御用で?」
「はい。ついては平壌市内に居住を許可されました。また栄転を機にこれと……」
そう言ってソンジョンはソナの方に手を置いて、恥ずかしそうな口調になって言った。
「結婚する事になりました。そこで軍の宿舎を出て住む家を探しに来たのですが、軍から三か所紹介された場所の一つがこちらのアパートなのです。上の方の階に空き部屋があると聞いて来たのですが」



