キャンバス地の肩掛けカバンをそろって抱えて、三人はゴムボートで河を下った。途中、禿山の斜面が大きく崩れて川岸が浅くなっている個所があった。それを避けてボートを反対側に誘導させながら、ソナがソンジョンに尋ねる。
「何、あれは?ずいぶんひどい土砂崩れみたいだけど」
「多分畑だ」
「はあ?畑?あっ!土止めをしないで斜面に作った畑が崩れて河に土砂が流れ込んでいるわけね」
「ちょっと!ソンジョン!」
美里はたまらず話に割って入った。
「だったら、何を植えたってちょっと大雨が降れば作物ごと流されちゃうじゃない?それに毎年あんな事が起きていたら段々川底が浅くなって水があふれ易くなる。北朝鮮で毎年のように起こっている洪水や食料不足って、これが本当の原因なんじゃないの?」
ソンジョンは数秒考え込んでいたが、やがてゆっくりと頭を振って答えた。
「俺は軍人の経歴しかないから、そういう事は分からない。だが、日本で学者の卵をやっている美里がそういうのなら、そうなのかもしれないな……」
一時間近く川面を走ると、ビルが林立する都市が見えてきた。北朝鮮の首都、平壌だ。だが、それは美里が知っている街並みとはずいぶん違って見えた。それほど高いビルもなく、どちらかと言うと古めかしい日本の地方都市のように見える。それを口にするとソンジョンが教えてくれた。
「馬鹿でかい高層ビルなどが出来たのは、主席の死後、金正日将軍が指導者になってからだ。凱旋門などはこの時代にはもうあるが、主席は人民の生活を犠牲にしてまで無意味な建築物は作らなかったと聞いている。主席は確かに一面冷酷な独裁者だったが、苦労した人だったから最低限人民の苦しみは理解できる方だった」
「何、あれは?ずいぶんひどい土砂崩れみたいだけど」
「多分畑だ」
「はあ?畑?あっ!土止めをしないで斜面に作った畑が崩れて河に土砂が流れ込んでいるわけね」
「ちょっと!ソンジョン!」
美里はたまらず話に割って入った。
「だったら、何を植えたってちょっと大雨が降れば作物ごと流されちゃうじゃない?それに毎年あんな事が起きていたら段々川底が浅くなって水があふれ易くなる。北朝鮮で毎年のように起こっている洪水や食料不足って、これが本当の原因なんじゃないの?」
ソンジョンは数秒考え込んでいたが、やがてゆっくりと頭を振って答えた。
「俺は軍人の経歴しかないから、そういう事は分からない。だが、日本で学者の卵をやっている美里がそういうのなら、そうなのかもしれないな……」
一時間近く川面を走ると、ビルが林立する都市が見えてきた。北朝鮮の首都、平壌だ。だが、それは美里が知っている街並みとはずいぶん違って見えた。それほど高いビルもなく、どちらかと言うと古めかしい日本の地方都市のように見える。それを口にするとソンジョンが教えてくれた。
「馬鹿でかい高層ビルなどが出来たのは、主席の死後、金正日将軍が指導者になってからだ。凱旋門などはこの時代にはもうあるが、主席は人民の生活を犠牲にしてまで無意味な建築物は作らなかったと聞いている。主席は確かに一面冷酷な独裁者だったが、苦労した人だったから最低限人民の苦しみは理解できる方だった」



