美里が目を覚ました時、空はうっすらと明るくなりかけていた。焚き火はまだ燃えていたが、ソンジョンとソナの姿がない事に美里は気づいた。まさか二人だけ先に出発したのだろうか?不安に駆られて辺りを見回すと、例のゴムボートはそこにあった。なら、二人ともどこか近くにいるはずだ。
立ちあがって歩きまわっていると、近くの茂みの中からかすかに声が聞こえてきた。そこを覗きこんだ美里は一瞬目が釘付けになり、すぐにくるりときびすを返して、足音を立てないようにそっと焚き火の場所へ戻り、また毛布を頭からかぶって寝ているふりをした。
茂みの中では、ソンジョンとソナが半裸で抱き合っていたからだ。数日前までの美里なら呆れて怒り狂ったかもしれない。
だが、ソナはもちろんソンジョンにとっても、これから向かう場所は敵地、死地だ。生きて2011年の世界へ帰れるという保証など無い。それを目前にして、男と女の感情に突き動かされたとしても、それを責められるだろうか?
それにソナの気持ちは同じ女としてよく分かる気がした。最初、北朝鮮人間それも軍人だと知って、美里もソンジョンを恐れていた。だが毎日行動を共にしているうちに、彼が武骨で不器用ではあるが、誠実で正義感あふれる人柄だという事が理解できた。それは美里が以前に持っていた「北朝鮮人」のイメージとはかけ離れた物だった。
それに彼は今、祖国での生活の全てを投げ捨てて北朝鮮の歴史を変えるべく命をかけている。祖国の同胞を救うために。そんな男性を美里は日本で見た覚えがなかった。日本人はもちろん、在日韓国・朝鮮人の中にだって、そんな男が一体どれだけいるだろうか?
やがて二人が焚き火のそばに戻って来た気配を確かめ、美里はたった今目が覚めたというふりをして、毛布をはねのけ起き上った。
「あれ、もう朝?」
心なしか上気の跡が残っているような顔のソナが答えた。
「ええ、そろそろ出かけましょう」
立ちあがって歩きまわっていると、近くの茂みの中からかすかに声が聞こえてきた。そこを覗きこんだ美里は一瞬目が釘付けになり、すぐにくるりときびすを返して、足音を立てないようにそっと焚き火の場所へ戻り、また毛布を頭からかぶって寝ているふりをした。
茂みの中では、ソンジョンとソナが半裸で抱き合っていたからだ。数日前までの美里なら呆れて怒り狂ったかもしれない。
だが、ソナはもちろんソンジョンにとっても、これから向かう場所は敵地、死地だ。生きて2011年の世界へ帰れるという保証など無い。それを目前にして、男と女の感情に突き動かされたとしても、それを責められるだろうか?
それにソナの気持ちは同じ女としてよく分かる気がした。最初、北朝鮮人間それも軍人だと知って、美里もソンジョンを恐れていた。だが毎日行動を共にしているうちに、彼が武骨で不器用ではあるが、誠実で正義感あふれる人柄だという事が理解できた。それは美里が以前に持っていた「北朝鮮人」のイメージとはかけ離れた物だった。
それに彼は今、祖国での生活の全てを投げ捨てて北朝鮮の歴史を変えるべく命をかけている。祖国の同胞を救うために。そんな男性を美里は日本で見た覚えがなかった。日本人はもちろん、在日韓国・朝鮮人の中にだって、そんな男が一体どれだけいるだろうか?
やがて二人が焚き火のそばに戻って来た気配を確かめ、美里はたった今目が覚めたというふりをして、毛布をはねのけ起き上った。
「あれ、もう朝?」
心なしか上気の跡が残っているような顔のソナが答えた。
「ええ、そろそろ出かけましょう」



