美里は呆然とする他なかった。在日の「朝鮮人」と言っても彼女自身は韓国とも、ましてや北朝鮮とも関係があった事はなかった。親の意向で普通の高校には進学せず、いわゆる朝鮮学校へ通って朝鮮語は徹底的に教え込まれたが、大学入学資格検定試験に合格して日本の普通の私立大学に進学、そこで理系の学部の研究生になり学者になるつもりだった。
国籍だって、海外旅行も自由に出来ない朝鮮籍の不便さに嫌気がさして、そのうち日本に帰化するつもりでいた。だから、北朝鮮の悲惨な飢餓や脱北者のニュースもどこか他人事としか感じていなかった。
まあ、そのあたりの事情はなんとか理解出来た。しかし、それと今回のこの騒ぎと何の関係が……美里は突然、やっと彼らの言う「計画」の中味を理解した。そして声を押し殺すのも忘れて思わず叫んだ。
「あんたたち!まさか歴史を変える気?」
案の定、ソナに乱暴に口を押さえられた。ソンジョンはあわてて部屋のドアに近寄り、耳を押し付け、そっとドアを開けて廊下の様子をうかがい、ほっとした様子でドアを閉め、また元の位置に直立の姿勢で立ちながら、平然とこう答えた。
「主席が亡くなった月の終わりには、南朝鮮の当時の大統領だった金泳三との首脳会談が予定されていた。その会談が実現すれば、七六演説の経済開放政策はもう後戻り出来なくなったはずだ。だが、主席の急死で全てはストップし、開放政策はその年の11月、金正日将軍が完全に否定して撤回した。あと一年、いやせめて半年、金日成主席が生きていたら、わが共和国の運命は変わっていたんだ!たとえ、南朝鮮の資本主義に支配される事になったとしても、今の生き地獄よりはましだ!そうだ、俺たちは半島の歴史を変える。そのために1994年の共和国に行って主席暗殺を阻止する。そのための絶好の時空の穴がこの日本にある。これは天の導きだ!」
国籍だって、海外旅行も自由に出来ない朝鮮籍の不便さに嫌気がさして、そのうち日本に帰化するつもりでいた。だから、北朝鮮の悲惨な飢餓や脱北者のニュースもどこか他人事としか感じていなかった。
まあ、そのあたりの事情はなんとか理解出来た。しかし、それと今回のこの騒ぎと何の関係が……美里は突然、やっと彼らの言う「計画」の中味を理解した。そして声を押し殺すのも忘れて思わず叫んだ。
「あんたたち!まさか歴史を変える気?」
案の定、ソナに乱暴に口を押さえられた。ソンジョンはあわてて部屋のドアに近寄り、耳を押し付け、そっとドアを開けて廊下の様子をうかがい、ほっとした様子でドアを閉め、また元の位置に直立の姿勢で立ちながら、平然とこう答えた。
「主席が亡くなった月の終わりには、南朝鮮の当時の大統領だった金泳三との首脳会談が予定されていた。その会談が実現すれば、七六演説の経済開放政策はもう後戻り出来なくなったはずだ。だが、主席の急死で全てはストップし、開放政策はその年の11月、金正日将軍が完全に否定して撤回した。あと一年、いやせめて半年、金日成主席が生きていたら、わが共和国の運命は変わっていたんだ!たとえ、南朝鮮の資本主義に支配される事になったとしても、今の生き地獄よりはましだ!そうだ、俺たちは半島の歴史を変える。そのために1994年の共和国に行って主席暗殺を阻止する。そのための絶好の時空の穴がこの日本にある。これは天の導きだ!」



