縁隔操作(えんかくそうさ)

 歩いて五分とかからない場所にその建物はあった。近くで見ると改めて変わった造りだと感じた。オシャレな塀があって、西洋の貴族の館みたいな感じで、門からのぞくとギリシャの神殿みたいな白い柱が何本もあるし、窓にはステンドグラスがはめてある。
 という事は教会か?いや、だけど左側には喫茶店らしき小さな建物が付いている。教会が副業で喫茶店やるわけはないだろう。何なんだ、これは?
 すると塀の内側からほうきとチリ取りを持った若いおねえさんがひょいと姿を現した。そのおねえさんは俺とユリアに気づくと、にこりと笑って問いかけた。
「あら、こんにちは。これに興味があるのかしら?」
 突然の事で絶句してしまったユリアの代わりに俺が答えた。
「あ、いえ。なんか珍しい形の建物なんで何だろうと思っただけで。ここ、教会かナンかですか?」
「これはね、結婚式場なの。よかったら中見て行く?今日は何も予定入ってないから、案内してあげるわよ」
「い、いや、俺は別にそこまでは……」
 すると、おねえさんはコートのフードの中のユリアの顔に目をやって、一瞬きょとんとした表情をした。そして俺にそっと訊いて来た。
「あの、そちらのお嬢さん、ひょっとして理科学研究所の遠隔操作のロボットの実験の、あれ?」
 俺は無言でうなずく。するとおねえさんはユリアの手をつかんで半ば引っ張り込むような感じで招き入れた。
「だったら、なおさら見て行きなさいよ!女の夢に障害者も健常者もないんだから。ね!」