『―――リュカ!』
部屋をでた瞬間に、明るい声が響いた。
驚いて顔をあげれば他でもない、アンジェロが嬉しそうに立っていた。
『なにしてたの?リュカ』
「あぁ、バスチアンに…」
口にした途端にさっきのバスチアンの態度が思い出される。
あんなに、自分を拒絶して。
(…俺、は)
『リュカ、泣いてるの?』
アンジェロに心配そうに訊かれて気づけば頬を涙が伝っていた。
「……え、あ、あぁ、俺、」
(…ダセェ)
泣いてしまったことに自分でも戸惑いながら慌てて袖で拭う。
けれど哀しげにそれを横で見つめるアンジェロには何もかも解ってしまっているようだった。
『隠さなくっていい』
「え……」
アンジェロがリュカを抱きしめた。
だから残っていた涙を拭うことができず、リュカはただ呆然とした。
『リュカの心は今泣きたいんだよ…。我慢しちゃ、だめ』
ぎゅ、と背中に回った腕に力が込められて、アンジェロの体温が伝わる。
天使の体は陽の光のように暖かい。
(…アンジェロ、なんで)
止めていたはずの涙は更に溢れた。


