「え、あ、ありがと…」
これでいいんだ。
言いたくないことにまで、お互い触れる必要はない。
知る必要のないことまで、知る必要はない。
(…そうだろ?アンジェロ)
「じゃあな、頑張れよ、続き」
近づいた瞬間、明らかに怯えたバスチアンに傷ついて眉が寄ったが、構わずにその肩をポンと叩いて励ます。
本当は、怯えたその手から絵を奪い取って見てしまいたかった。
何もかもを、俺のものにしたい。
―――俺にはもう、お前しかいないんだ
キィ。
鈍い音を立ててドアが閉まる。
その瞬間一気に倉庫内のカビ臭い匂いが鼻をついた。
バスチアンといれば、そんなの気にならないんだ。
あいつといれば、何もかも満たされるんだ。
(…でも、お前は違うのかな)


