そんなのは無理なことなのか?
(…所詮、俺とお前は―――)
「俺に隠すんだな、」
思いのほか寂しそうな情けない声色になってしまった。
「兄ちゃんだって、描いてる絵も、っていうより絵を描いてるなんて僕、初めて聞いたもん」
(…あぁ、アンジェロ)
彼があんなことを言わなければ。
なんでアンジェロは自分たちをことごとく壊していくのだろう。
あの無邪気な天使に、果たして故意や悪意はあるんだろうか。
「アンジェロが言ってた兄ちゃんが描く誰かの絵って…」
「………」
「あれは誰なの…?」
バスチアンの高い声でそう訊かれて、胸が突かれたように痛む。
「ほら、…兄ちゃんだって言えないんじゃない」
少し悲しそうにバスチアンが言った。
そうだ、確かにお互いに隠していることがある。
バスチアンが何を隠しているかは解らないけれどでも――
(…でも、俺はお前の―――)
―――お前が大切だから
「これ、やるよ」
この前アトリエで見つけた鉛筆をバスチアンに差し出す。
彼がどんな表情を浮かべたかはわからない。リュカが俯いて、あえて目を合わせることを避けたからだ。


