lacrimosa








「…見られたくないんだ。兄ちゃんには、」

「バスチアン…」

「厭なんだ」


怯えた表情を作って自分から遠ざかるバスチアン。

リュカはその不可解な事実が理解できず、愛おしい弟のその態度にもどかしさを感じて苛立った。




「なんでだよ、バスチアン、なぁ。逃げなくたって…」

「お願い、来ないで!」

「わかったから、逃げるなって」


ひとまず安心させようと思い、リュカが後ろにさがる。

するとバスチアンは唇を噛み締めてゆっくりと息をしていた。



(…バスチアン)



バスチアンが自分にそんなにまで見せたくないものがある。

あんなに拒絶してまで、見られることを厭う、絵。



(…なんなんだ)



―――バスチアン、俺はお前の兄なのに


全てをわかりたいのに。