「人間を幸せに、って…。どうやるんだよ」
この天使の力があれば。
もしかしたら自分とバスチアンの毎日も
(…幸せに、なれる?)
『この羽』
アンジェロは自慢気にパタパタと白い翼をはためかせて
『この羽一枚一枚に、願い事を託せばいいんだよ』
ニコリと微笑む。
あの羽根だ。あれがあれば。
バスチアンと自分は…。
もう何年もお腹いっぱいに食べていない。そのせいかバスチアンの背はずっと止まってしまっているような気がする。
裕福な奴らが、幸せな奴らが、憎い。憎くて堪らない。そんな卑しい自分が嫌でたまらない。
(…その羽根さえあれば)
パサリ。
狂気に満ちたリュカの視線を感じ取ったのか、たたまれた羽はアンジェロの背からすっと消えた。
彼は穏やかな表情でリュカの隣に腰かける。
『――君は。君はバスチアンのことがとても好きなんだね』
抑揚のある静かな声でアンジェロが言った。


