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振り向くとアンジェロが居た。
天使の羽がある癖に、そんなに息をきらさなくとも飛べばいいじゃないかとリュカは思った。
そんな皮肉が咄嗟に思い浮かんだことにもまた、アンジェロを羨ましいと思っている自分に気づいて心の中で舌打ち。
『――僕、僕、ごめん。リュカ…』
「…何が?」
『そんなつもりじゃなくて、その…』
どうやらリュカが描いた[ある人物の絵]について、さっき触れたことを詫びているらしい。
「別に、気にしてない」
強がりだけれど、そう言った。
そうやって謝られることのほうが余計に嫌な気持ちになるということがわからないのだろうか。
それもまた素直で純粋無垢な天使の特権なのかと、リュカは内心、自嘲気味にわらう。
『でも、君の描いたあの絵、僕本当に好きなんだ…』
今度は翼を広げてくるりと旋回しながら、リュカの正面に回ったアンジェロ。
夜、街灯の明かりが照らすだけの薄暗く人気のない場所だからだろう。


