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「――それでね、僕すごくびっくりしたの」
3人でささやかな夕食を囲むテーブル。
バスチアンが嬉々として語るのは、リュカの知らなかった2日前の出来事。
リュカが仕事にでていて居ないときに知り合ったのだという。
「ねぇ、アンジェロ、どうして僕とお兄ちゃんのところに来たの?」
ジャガイモをつつきながらバスチアンが訊く。
するとアンジェロは悪戯そうに笑った。
『知りたい?』
「うん…!」
その答えに何を期待しているのか、バスチアンは瞳をキラキラさせてアンジェロを見る。
それを見ていたリュカの眉がぴくりと動いたがそれも一瞬で、あとは目下のスープへ視線を落とす。
アンジェロは無表情でリュカを見つめたあと、にっこり微笑んでバスチアンに言った。
『―――あのね、リュカの描く絵が綺麗だったからだよ?』
カチャン。
リュカが手にしていたスプーンが音を立てて皿に崩れた。


