「なんで、アンジェロがここにいるの?」


やっと口を開いたリュカ。

けれど視線はあげず、手許のジャガイモへ落としている。




「え、だからそれは兄ちゃんを驚かせようと思って…」

「バスチアンは知ってたのか?アンジェロのこと」

「あ、あぁ、うん…」


こちらを見もせずにトーンを落とした声で問うリュカの口調は静かだった。

リュカが驚いて喜ぶはずだと確信していたバスチアンは、それに含まれている不機嫌さに戸惑う。



(…兄ちゃんはどうして、怒ってるんだろう)



『リュカ、僕、いない方が良かったかな?』

「俺は、別に、…ただ「そんなわけないでしょ?兄ちゃんがアンジェロを嫌うわけないじゃない」


リュカが詰まらせた言葉をバスチアンの高い声が引き継ぐ。

ね?と、にっこり傾げられた表情はどことなくアンジェロに似ていて、リュカの眉は一層寄った。



(…綺麗なんだ、)



純粋なんだ、2人とも。



(…俺だけ、)



心が。



「アンジェロも夕食食べていってよ、ね?」


ああ、その愛しい笑顔を自分以外に向けないでほしい。

リュカはバスチアンが好きだった。いつだって自分にはないものを彼に見ていたから。

絶対に守らなければいけない、世界中でたった1人の弟だから。



(…アンジェロ、お前はどこまで)



―――俺を苦しめるの?