「名前、ないの?」

『ないの』

「そう、じゃあ…

―――アンジェロ…」


それは最初からもう決まっていたかのように、サーシャの頭に真っ先に浮かんだ名前だった。

男の子は青い瞳を少しだけ大きくして、ふわりと微笑んだ。




『ありがとう、サーシャ。

…どうしてその名前にしたの?』

「だって、そんなの。

あなたが天使みたいだからだよ?」


決まってるじゃない?と言わんばかりに首を傾げてサーシャは窓辺に座るアンジェロを見上げた。

彼が現れる前よりも太陽は一段と煌めいて、その白い服に反射している。




「…降りてきたら?」


サーシャがそれとなく少年に語りかける。

その幻のような美麗な光景は今にも消えてなくなってしまいそうで、少しばかり不安になったのだ。