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「―――アンジェロよ、第一級ミカエルの称号に加え、そなたの父が放棄した大天使ガブリエルの持つ力の全てを正式に継承したことを報告す」


大天使の一人が羊皮紙を広げて文章を読み上げ、感情のない目で僕を見る。

そしてそれを丸め直し、小さく溜め息を吐くと残念そうに言い足した。




「きみはまだ幼い。大天使ガブリエルの力など到底使いこなせないだろう。きっと受け継いでその体が許容することすらまだ無理だ」


僕はほとんど話を聞いていなかった。

第一級ミカエルの称号なんていらない。

大天使の力だっていらない。

僕が欲しいのは―――




「きみに時期が訪れるまで、このパワーストーンに力を半分封印しておいた」


オーロラピンクをした石ころを差し出されて、無気力なままにそれを受け取る。

そして虚ろなままの瞳でぼんやりと手の中のそれを見つめた。



(…この中に、パパの力が入ってるんだ)




「慎重に、気をつけて使いなさい」


大天使はくるりと背を向けて飛び立った。

遣いなんかよこして、神様はなんで直接僕に会いに来ないんだろう。

天使と人間のこと、パパやママのこと、僕のこと、ちゃんと説明してほしいのに。



(…いらないよ、こんな力なんて、)