アンジェロという幼い天使には友達と呼べる存在が居なかった。

第一級ミカエルというその称号は、誕生したときにはもう既に受け継いでいて、それは大天使であった父親の恩恵を授かった故のことであった。




『…パパ、』

「ごめんな、アンジェロ」


偉大な偉大な大天使。

自慢で誇りで憧れの父親。

神様もパパに全信頼を置いて気に入ってくださっていた。



(…それなのに)



「ごめんな、お前は立派な天使になるんだぞ」


ママが人間と恋に落ちて、羽を毟ってその人間と一緒に命を落とした日から、パパが変わった。

大天使の名は廃れ、嘗ての栄光は完全に地に落ちた。

天使の仕事をしなくなり、祈りの塔の最上階に籠もって2ヶ月ほどでてこなかったり。

ほんの少し前まで僕のヒーローだったその快活な笑顔も輝きに満ちた瞳も、すっかり曇りきって青白かった。



(…ママのせいだ)



ママのせいであんなに格好良かったパパは変わってしまった。




時折大声をあげて叫び笑うその様は、地底から唸り声をあげる悪魔のようだと思った。



(…天使なんかじゃない)



パパが変わってしまう前までは、天使であることに名誉さえ感じていたし

その責務に何の疑問も抱いたことはなかった。