すると少年は、意を決したように突然立ち上がり、泣いているサーシャを見下ろした。




「…わかったよ」

「…?」

「あまり話したくはなかったんだけど、アンジェロのこと、僕の知ってる全部をお姉ちゃんに教えてあげる」


まだ、知れることがある。



(…私の知らなかったアンジェロ、)



そんな希望にも似た期待に、サーシャは泣くのをやめて少年を見上げた。

少年は唇を噛み、何かを堪えるような表情を浮かべている。

それはこれから告げる事実を語ることが、彼にとってどんなに困難なことかを物語っていた。




「僕が、アンジェロの代わりに話すから。

全部知ったうえで、お姉ちゃんが願い事を実現するかどうか決めたらいいよ」


険しい表情で少年が紡ぐ言葉に、サーシャは何も言えず、ただゆっくりと肯いた。












「―――じゃあ、話すよ。

可哀相なアンジェロと僕たちの物語を」