サーシャのブロンドの髪を、開け放した窓から入り込んだ風が弄んだ。

青空は今日も快晴で、雲ひとつない。



(………、)



少女はただその場に座り込み、その空を見つめていた。




―――あの時

この場所でアンジェロが消えていった時、サーシャは迷っていた。

幸せの羽に託すお願いごとを。

アンジェロが天使のままで天国に召されたいのか、それとも――――



(…神様はクリスマスにアンジェロを堕天使にするつもりだったんだ)



だからアンジェロは、有効期限だなんて…



(…なに、やってんの。人を幸せにしてる場合なんかじゃなかったのに)



それでも天使であるうちに羽を分け与えることを止めなかったアンジェロの精神は、生粋の天使なのだと。

―――幸せの羽は二度生えてきたりはしなかった

唯一無二の限りある尊いそれ。




(…また生えてくるよって言ったのに)



アンジェロが嘘を言ったあの時、彼はどういう気持ちだったんだろう。