両手で力いっぱいに愛しいそれを握って、瞼をぎゅっと閉じて―――――――
渾身の祈りを託した。
「―――ありがとう。」
心底幸せそうにそう言ったアンジェロの体は金色に輝き、青白かった頬も息を吹き返す。
唇は真紅に咲いて瞳も美麗で澄んだ青を取り戻す。
「―――サーシャ、ありがとう。」
(……アンジェ、)
スーッ、と。たちまち透明になっていくアンジェロ。
(…アンジェロ)
その表情はサーシャに優しく笑いかけ、
消えて、いく。
「―――待って、いかないで!」
みるみるうちに、ああ向こう側の壁が透けて見える。
「待って、待って、…!
アンジェローーーーーー!」
最初にこの部屋にきたときのアンジェロ。
我が儘や愚痴を文句ひとつ言わず聞いてくれたアンジェロ。
いつだって笑顔で、傍に居てくれたアンジェロ。
きちんと相手と心で向き合うことを、生きる意味を、教えてくれて、誰かを愛しいと想う心を芽生えさせてくれたアンジェロ。
アンジェロ
アンジェロ
アンジェロ
―――嗚呼、頭も心もアンジェロでいっぱいだ
「…まっ、テ、」
それなのに。もう―――――
見 え な い


