「―――1人にして」


枕に顔を伏せたまま不機嫌な声色で唸れば、エレナがそっと部屋を後にするのがわかった。



シン、と静まり返った室内は面積だけが広くてうんざりする。

うつ伏せのまま横目に部屋を見渡す。

真っ白な天涯付きのこの大きなベッド、大量に置かれたお気に入りのテディベア、先日我が儘を言って即日取り付けたばかりの淡いピンクのファーの壁(元は白かった)、先程投げ捨てた服の山。



(…いらない)



この部屋にあるのはサーシャが欲しいと望んだもの。

全て、与えられたもの。

こんなにたくさんの物に囲まれて、サーシャは幸せなはずだった。



(…何が、足りないんだろう)



お腹は、いっぱいだ。

欲しい洋服もおもちゃもこの前全て手に入れたばかり。



(…どんなにどんなに、手に入れても嬉しくない)



―――満足、できない



満足できないからすぐに新しい何かを求めた。

それでも束の間の内、それさえも手から滑り落ちるように無価値と化していく。

また、更に、何かを、求める。




―――けれど