「アンジェロ…!どこ行ってたの?なにしてたの?私、ずっと―――ねぇ、どうしたの?ボロボロじゃない…」

『…えへへ、ちょ、っと、やり過ぎちゃ、っ、た』


窓辺を乗り越える体力もなさそうなので、サーシャが両肩を必死で抱えながら引きずり込むように室内へ引っ張る。

ドシン、と着地音がするかと思いきや、ゴト、と微かに床が鳴っただけだった。



(…アンジェロ、痩せた)



元々細身だった体も、折れそうな程細い。

両肩を掴んだとき、その軽さに拍子抜けした。




「水、拭かないと…」


タオルをと、取り乱す気持ちを落ち着けながら部屋の奥へと背を向ける。

と、アンジェロはその僅かな力を振り絞って彼女の服の裾を掴むと、引き止めた。




『行かない、で、…』

「でも、!風邪ひいちゃう!」

『…い、い、…から、』


ぎゅ、とか弱い力を指先に込めて、アンジェロはそれでも力なく笑う。



(………何で?)



何で、笑ってるの?

苦しいのに幸せなの?



(…天使はなんでもできるんじゃ、ないの?)



せめて側にあったブランケットをむんずと手繰り寄せて、震える体を覆った。

お医者さん呼ぼう、と言えば微かに首を振る。お風呂入ろう、と言っても同じ。




「…じゃあ、じゃあ、どうするの?!ねぇ…。

アンジェロ、病気になっちゃうよ!



…死んじゃうよ?」