lacrimosa








「も、もらえないよ…そんな大切な…」

『いいからぁ』


自分の羽を毟ったという彼の行動に少したじろいで、サーシャは目をぱちくりさせた。

そんな様子が面白いのか、アンジェロは笑いながらサーシャの手のひらへそれを握らせる。




『この羽はね、人間を、サーシャを幸せにするんだよ?』

「…え、」

『だからね、ひとつお願い事してごらん。きっと叶うから』



(…でも、)



いいのかな、と躊躇う気持ちを飲み込みながら、サーシャはそっと手のひらを開ける。

そこにはミルク色のふわふわした羽が一枚ちゃんとあって、何だかそれが凄く愛しく感じた。




「…ありが、とう」

『僕の仕事はその羽をみんなにあげることだから』

「……羽、を」

『うん。有効期限はクリスマスまでだからねー?』


楽しそうにサーシャを見つめるアンジェロ。

彼が初めてこの部屋に来たのが11月24日。ちょうどイヴの1ヶ月前。



(…今日が14日だから、)



有効期限はあと10日ほど。