「――――そんな事が、」


壮絶な過去を語られて、サーシャは驚きの声をもらした。

目の前の堕天使は片眉をさげ、口端を歪めてはわずかに笑んだ。




「びっくりした?」

「うん。…で、あなたはそのバスチアンなんだよね?」


お話の世界の人物に実際に対面しているような不思議な感覚をおぼえて、サーシャが問う。

堕天使はもちろん、と肯いてニッと白い歯を見せた。




「でも…」

嫌な予感がして、サーシャの心臓がトキリと鳴る。



「でも、アンジェロは…、彼は…友達を殺してしまったって。そう言ってた…」


恐る恐る、答えを聞くのが怖いとでもいったふうに上目遣いにバスチアンをみる。

すると彼は何かに堪えるようなやり切れない表情をうかべた。




「そのあとどうなったか、知りたいよね…」


バスチアンの言葉にサーシャはゆっくりと頷いた。

彼は一度大きく息を吸って、再び過去を語りはじめる。