「…僕、よかっ、良かった。」


ガクリと足の力が抜け、その場にしゃがみこんで更にわんわんと泣きわめく。

そんなバスチアンを見下ろして、アンジェロは仕方ないなと眉をハの字にして笑っていた。




「…戻らなかったら、もう会えなかったらどうしようって、僕―――」

『もう大丈夫だよ、バスチアン。助けてくれたんだね。ありがとう。

でも、どうして…?』


リュカがこの事態を良く思わないかもしれない。

また彼を傷つけてしまうかもしれない。

アンジェロはそれが凄く心配だった。




「兄ちゃんにはね、全部話したんだよ。

そしたら凄く後悔してたよ…。アンジェロ、君に会いたがってた」


バスチアンが話すのを、アンジェロはただ黙って聞いていた。



『僕は間違ってたのかもしれないね。

最初から、リュカに全てを話すべきだったのかも。

でも、リュカの心は綺麗だけど、憎しみが巣くってたんだ。

だから真実をまだ受け止められないんじゃないかって、僕は思っちゃったんだよ』


固まっていた羽根を伸ばすように真白の翼を広げ、アンジェロは続けた。



『だけどきっと、リュカは僕が思ってたよりも、もっとずっと強いんだ。君を守りたいっていう、強い愛があったんだもの…』


バスチアンのほうへ穏やかな笑みを見せながらアンジェロは肯く。

そう、リュカを見くびってしまっていたんだ。本当はもっと早く伝えるべきだった。




『バスチアン、君が羨ましいよ。リュカにそんなに想われて…』

「僕はアンジェロが羨ましいけどな。君は綺麗な天使だもの…」


リュカの行方を探して歩きながら、2人はそんな言葉を交わして笑い合った。