lacrimosa








「それからもう1つ。

兄ちゃん、アンジェロのことを幸せだとか、僕からパパを奪ったとか言っていたでしょう?

…でもね、」


バスチアンは俯いて目を背け、苦しそうに顔を歪めた。

リュカも鼓動がうるさいくらいに高鳴るのを感じながら、その先の言葉を待って息を飲む。




「…ゥ、でもね、アンジェロは何も知らなかったんだよ。ずっとずっと何も。

やっと知らされたときにはもう…」

『…………』

「パパも、アンジェロのママも一緒に死んだ後だったんだって…」



(………………、)















「…嘘、だろ」














―――父さんが死んだ?












リュカは今までの事を思い起こした。

何度となくアンジェロに吐いた暴言の中に含まれていた両親を失っていないことへの嫌味。

アンジェロはもうそれを失っていたというのに。

彼の立場を考えれば、自分と変わりないくらい自分という存在やバスチアンを憎んでもよかったはずなのに。