『みて、あれ…。あの人は毎日あそこに立っていなきゃならなくて、可哀想だ』
いきなり何を言い出すのかと思い、彼の指し示す方をうかがえば、元首相の銅像が立っていた。
(…ただの像じゃねぇか。それがどうしたんだよ)
『僕はこれでも天使だから。
自分で命を絶つことは出来ないよ』
アンジェロは振り向いて、リュカに微笑んだ。
(…なに笑ってんだよ。くそ、天使だからってなめやがって)
父さんを奪ったくせに。
『でもリュカは僕の初めての友達で、僕は君が大好きだから。
リュカが僕を憎んでいても、それは変わらないよ』
(…何が言いたい?)
今度は同情を買うつもりなのかと、リュカは腹がたって拳を握った。
あくまでもこの天使は消えるつもりなんてさらさらないのだ。
手の中にある石を強く握って、目の前で勝ち誇ったように微笑んむアンジェロを睨む。
(…くそ、)
「お前にその気がないなら、俺がお前を消してやるまでだ」
『無駄だよ。バカだね、リュカ。人間が天使に適うわけがないでしょ、』
肩を竦めておどけてみせる。
どこまでも自分をおちょくって、人間を馬鹿にして…
(…バスチアンにあんな思いをさせて)


