lacrimosa








「ママもパパも、お仕事とお金の話しかしてくれないし。

私の友達も、みんな出演した映画とか雑誌の話ばっかりなの…」




「―――みんな、“何もないただのサーシャ”なんか好きじゃないんだよ」


ブロンドの髪をくしゃりと握って、片手で頭を抱えながら鬱々としてサーシャが嘆く。

けれど、目の前のアンジェロはポカンと口を開けたままだ。

そしてその顔は次第にニッコリと笑顔に変わる。




『そんなの、贅沢じゃない?』

「え?」

『サーシャは可愛いし綺麗だし、こーんなに綺麗な部屋に住めるんだよ?

きっとみんな羨ましいと思うけどなぁ』



「…でもそんなの全部、いらないよ」


クツリ、喉の奥から乾いた声を出して、サーシャは彼から目を逸らす。

そんな彼女をアンジェロは優しい眼差しで見つめている。




『ねぇ、見てて…?』


勢い良く立ち上がる。

緩やかに上がったアンジェロの口角が悪戯そうで。

なにが始まるのかと、サーシャも少しわくわくしながら彼に視線を向けていた。




「―――いくよ?」


その瞳があまりにも愉快に笑うものだから、サーシャも期待に目を輝かせる。



バサリ。

一瞬にして風が巻き起こり、そんな音がして―――



(…、くッ、)



眩しさに顔を腕で覆い目を瞑った。

後光を放つかの如く、耐え難いほどに煌めく金色の光が、閉じた瞼を透かして侵入してくる。