lacrimosa








「それでも…それでも、俺は…」


リュカの震える声と瞳が、アンジェロを狂わせる。



『僕を殺すの…?リュカ、』


どうして
どうして

―――友達だって言ったじゃない



「兄ちゃん、兄ちゃんやめてよ…。僕は幸せだから。充分幸せだから」

「嘘つくなよ、あんな絵描いといて!」


リュカの怒号がバスチアンを愕然とさせた。

開いた口は言葉を紡ごうと開閉を繰り返すけれど、何もでてこない。



(…兄ちゃん、あれを見てしまったの?)



『もう、いいよ。リュカが僕を殺したいならそうすればいい。

憎みたいなら憎めばいいさ。

その忌まわしい石の力を使えばいいじゃないか…』



(…どうせ、僕は誰にも愛されないんだから)












(…君は堕天使のバスチアン――僕の弟を守る人間のリュカ。

僕は君が大好きだ。

いつだって君を見てたんだ。君の描く綺麗な絵の内容はバスチアンだったけど。

君はいつだってバスチアンしか見てはいなかったけど。

どうしてバスチアンなの?バスチアンだって、バスチアンさえいなかったら、君のパパは死んではいなかったかもしれないのに。

どうして。どうして。

君が憎む僕のママの息子なのに。

バスチアンにとって、きっと君は、君こそが、天使なんだろうね。

どうしてみんな僕じゃない他の誰かなの?)