「どうしたの?兄ちゃん…」
寝ぼけ眼をぱちくりさせて問うバスチアンと、リュカは目を合わせることができない。
さっきの絵を見てしまったことへの罪悪感と背徳感が邪魔をしたから。
「アンジェロ…。もう、もう俺たちから何も奪わないでくれ。…お願いだから、」
『…ふふ、俺たち?リュカは僕がいなくちゃ幸せになんかなれない癖に』
(…君には僕が必要なんだよ?リュカ。リュカ、)
アンジェロが2人を眺めながら余裕綽々に答える。天使の職権乱用じゃないかと、リュカは思った。
「いや、これがある…」
リュカはふと、思い出したようにポケットから石を取り出した。
アンジェロがハ、と息を飲む。
「アンジェロ、お前には悪いけど俺はこれを使って…この力で…バスチアンを幸せに…『―――無理だよ』
恐る恐る手にしたそれを、食い入るように見つめるリュカの言葉を、アンジェロが遮った。
『それは僕のパパの力なんだよ?僕を殺しでもしなきゃ、その力は手に入らないよ』
まして人間の君なんかに。
アンジェロはそう付け加える。大好きな人間。人間のリュカ。大好きなリュカ。
―――どうして僕の敵に回るの?
「…兄ちゃん、」
心配そうに呟くバスチアン。
それをやっと一瞥したリュカは、意を決したようにアンジェロと対峙する。


